<月経困難症とは>月経直前や月経時に下腹痛や腰痛といった疼痛を主症状とし、腹部膨満感、悪心、嘔吐、下痢、イライラ、脱力感、食欲不振などの症状を伴う病的な状態のことをいいます。
<月経困難症の分類> *機能性月経困難症:病気が原因でないもの。主に鎮痛剤やピル、漢方薬を用いて症状のコントロールを図ります。一般的にはまず鎮痛剤を使用し、鎮痛剤で症状が改善されない場合や症状が重い場合にピルを用います。 *器質性月経困難症:病気(子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症など)が原因で起こるもの。原因となる病気の治療が原則となります。 <月経痛の成因>
月経時にみられる悪心,下腹痛,下痢,頭痛などの全身症状は,PG (プロスタグランジン)とその代謝物質が体循環に流入することによって生じると考えられています。PG(プロスタグランジン) は月経血を排出するために子宮内膜から産生され,PG により子宮筋の過剰収縮とそれに伴う虚血性疼痛が発生するというしくみです。
🌷当院の月経痛治療 東洋医学的な治療と女性生殖器・骨盤からの痛みを伝える神経線維の走行を考慮した現代医学的鍼灸を併用し、痛みの改善を図ります。診察から得た情報をもとに東洋医学的治療も併用していきます。また、セルフケアについてのアドバイスも行っています。
<月経痛に関する鍼灸の研究から> *Helmshaの月経痛に対する鍼治療の効果についての研究月経痛が、鍼治療群で90.9%改善、使用していた鎮痛薬が41%減量したと報告されれいます。*Smithらのコクランライブラリーのシステマティックレビュー機能性月経困難症を対象とし、薬物(NSAIDs)との比較では鍼治療が有意に効果的であり、短期の月経痛に対して有効であることが分かっています。
👉機能性月経困難症に対する鍼治療は、月経痛に対して有効で、鎮痛剤の使用量を減少させる効果が期待できるんですね。
参考文献)編者 川喜多 健司・ 矢野 忠 2020年1月10日発刊 鍼灸臨床最新科学ーメカニズムとエビデンス 発行所 医歯薬出版株式会社
<東洋医学的にみた月経痛> ①肝鬱によるもの情緒の変動で気が滞ると経血が停滞し、胞宮(子宮)の気や血の流れが悪くなり、痛みを生じる ②寒湿によるもの冷えから胞宮(子宮)への気血の流れが悪くなり痛みを生じる ③肝腎虚損によるもの肝と腎の機能低下により、胞宮(子宮)へ流れる精血が不足しするため、栄養が足りずに痛みを生じる
<トピックス> 一般女性のうち約3分の1は、月経痛に何らかの医学的介入を必要とし、月経痛が医学的、社会的に重要な問題であることが再認識されています。月経困難の症状は若年齢かつ未産なものほど強く、月経痛のため半年のうちに一日でも仕事を減らしたり、休んだりする女性が27.3%存在するなど、勤労女性の社会的QOLを低下させています。一方で、月経中の自分の状態について周囲から理解されていないと答えたものは、全体の4割を超えており、月経に関する社会的啓蒙が必要です。また、月経困難症のもたらす社会経済学的損失のうち、労働損失のみで年間約3800億円と推計されています。 参考:リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)から見た子宮内膜症等の予防、診断、治療に関する研究(総括研究報告書)